誰が壊したの? クレーム対応で大変でした
サングラスのフレームが折れたというのがクレームの内容でした。
その内容を聞くと、「去年購入したサングラス。冬になりしまっておいた。春先になり使おうと思い、タンスから出すとフレームが折れている。時間が経って折れてしまうなんて、これは不良品だ。あなたたちは粗悪なものを売ったのだ、どうしてくれる!」ということでした。
当時私は、服飾雑貨売場の責任者に赴任して間もなく、クレーム自体は部下が受けました。該当のサングラスが手元にないことには事情が分からないので、そのサングラスをお持ち頂くか、送ってほしいとお客様にはお願いします。
さぁ、こうした事案どう思いますか?
しまって置いただけで、フレームが折れるなんてそんな事柄聞いたことがありません。ただ、物事は早計には判断できませんから、たとえ費用が掛かっても商品試験室で検査することにしました。
調べてお知らせするというのがお客様への連絡。窓口を変えないために、部下から連絡させます。私は上司に検査費用のお願いと、試験室へ事情の連絡です。
それで実際はどうだったか。試験室から「経年や温度変化等で折れた断面と、圧力を受け折れた断面は違うもの。今回の事例は、強い圧力がかかって折れた時に断面で、しまっておいた等の環境変化で折れた断面とは違う」という内容の検査結果をもらいます。
※検査結果報告にはもちろん科学的な見地の詳細が書かれています
ここからが問題。「検査の結果(科学的見地)では、冬の間タンスにありながら、お客様またはご家族の方のどなたかが、サングラスをいじりフレームを折る原因を作ったと思われます。不良品では無く、瑕疵は売り場にはありません」というのを接客用語で伝え、ご理解頂かなくてはなくてはなりません。
上記同様に部下からお客様には連絡しますが、納得してもえません。困惑している様子の部下を見ながら自分が連絡しようと思います。
こうした時にクレームというものの厄介さを思い知ります。科学的な知見で対象物に起きた顛末を伝えても、理解したくないという気持ちを持っていると、人間理解しないものだと思えるからです。
サービスの範囲で対応したくても、お客様が壊してしまったものまで全て、不良品だとか販売責任があるなどの主張で対応するとなると、売場が利益度外視の慈善事業になってしまいます。しかも今回の事例は「不良品を売りつけたな!」と、大層な剣幕の方です。
ここで思わぬことが起こります。取引先から「余った材料で復元できるので対応できますし、無料でできます」と連絡が入るのです。
売場や百貨店を攻め立てて、すごい剣幕で、この売場は不良品を売ったのか!という主張のお客様は、結果この対応ですんなり納得。
いったいこれはごね得だったのでしょうか。それとも間が良かったのでしょうか。こうしたことも売場では起こります。