【立場立場で見える風景 】

考える道筋が異なります。

 「立場が違うんだ、仕様の無い事を言うな!」そんな言葉で、諫められたことありますか?

 自分の立場でしっかり考えて発言しているので、話の筋道が違うという事はありません。

 しかし、立場が異なると、その筋道が異なります。役割も異なります。

 自分の立場だけで語るのではなく、上にも下にも目線移動して語るようにすると、それぞれの立場の方の理解を得やすいでしょう。

 ただ、下のスタッフが主張する考えは以前の自分が通ってきた道。分かりやすいです。

 上司の立場は未知の世界、想像するしかありません。

どんな内容でも立場のある方がしなくてはならないことがあります。

 もう十数年前です。私が所属していた支店では、夏にその地域の花火大会が開かれます。

 業務終了後、早番そして遅番者が順に仕事を上がると参加します。 

 私は商品担当なので、運営は任せ、屋上花火宴会のための買い出し要員で動きます。

 ビール、焼酎からソフトドリンク。乾きもの、焼き鳥、揚げ物、惣菜。

 とにかく、売場の参加人数分を地下の食品売り場で買って、段ボールを敷いて、屋上にセッティングします。

 18時半に早番が来るので、ビールを丁度そのころ運び入れ、冷たいものを飲んでもらいます。 

 その時、フロア責任者の課長はというと、TV中継もあるような花火大会ですから、取引先接待要員です。屋上の一番いい場所は取引先が来往します。エレベーターボーイを課長が務めていました。

 活気に満ち、一生懸命売場メンバーのために動きをしている私をみて、「いいなぁ…」とつぶやきます。

 立場の違いです。社員ならだれでもできる内容の業務ですが、売場の屋上宴会が行われるのが習慣のときは、管理職が社用の雑務を行うのです。

被害にあった時もそうでした

 私が支店時代に、4階のミセス服カテゴリーに隣接して、呉服と宝飾売場がありました。 

 いわゆるアジアの窃盗団に宝飾品を持っていかれ、被害に合いました。

 出社したら大騒ぎで驚いたのを覚えています。

 それでも、宝飾売場には宝飾の担当がいます。被害をまとめ捜査の方と話しています。

 フロア長の課長が休みを返上。事情を聞き、朝からばらばらとやってくる役員に事柄を説明します。

 詰問調で色々聞かれる課長の姿を見ると、決して課長が悪いのではなく、犯罪集団が悪いのに、どうして同じ被害者の課長が済まなそうに、頭を下げ説明しなきゃならないんだろうと感じました。

 これも立場の違いなんでしょうね。

 婦人服担当の私は、隣接売場の被害があるとはいえ、その日の運営手伝いもあります。レジ回りで先輩と話していると、課長が近づいてきて言うのです。

 「もう帰っていいかな、どう思う?」って。 

 確かに正午も過ぎています。本店から役員がいつ来てもいいように、朝からずっと同じ場所に立ち続けていました。休みのシフトでしたが。

 困り切った顔で聞いてきた上司に、労いの気持ちと共に「もう良いんじゃないですか、帰っても」と声掛けしたのを覚えています。

 その数分後、休みでゴルフに行っていた常務が到着、事情を教えてってなります。

 その後課長が言いました「あの時帰ってなくて、ほんと良かったよ」って。

 その後知ったのですが、しっかり防犯システム付けて欲しいと社にお願いしていたのが課長で、費用の問題だといって断わっていたのが会社でした。

 でも、役員たちが課長を労うために来店したとは聞きませんでした。これも立場の違い。 

見る角度で異なります。

 当たり前なのですが、何事も見る角度で異なります。

 マネージャーっていいなとか、バイヤーって良いなとか、早く課長になりたい、部長になりたい、役員にって思っていても、見る角度で、良し悪しが必ずあります。

 そんな様々な角度から物を見る訓練をすると、上の立場、下の立場で物事を考えられるようになるのかもしれません。

 幅のある考え方ができる方が、より柔軟になっていいと思います。頑固で硬直した方がいいなら別ですが。

荘子の「尾を塗中に曳く」(おをとちゅうにひく)しかりです

 「尾を塗中に引くとは」簡単に言うと、

 荘子が釣りをしていると、楚という国の王が、自分につかえないかとスカウトしたので、荘子が仕官しないでのんびりくらしたいというのを、祀られた亀より、泥の中をはっている亀のように生きたいと言った故事です。

 高級官吏になって宮廷で窮屈に過ごすより、市井で暮らした方が自由で、その自由がどうしても大事という意味でもいいかもしれません。

 物事をどう考えるかは通り一辺倒ではありません。

 立場で異なります。

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