【百貨店雑記 その2】
百貨店雑記 その2
百貨店には、おもしろいというか、社内で話題に上るような行いをする方がちらほらいるものです。感心させられるような逸話もあれば、極端な性格を表すような方もいます。
平場、アイテム売場と言われる売場がありました。パワーアイテムの集積がされます。今回の話題のアイテムは、ドレス、スーツ、コートです。
今はこうしたアイテム売場はほとんどなくなり、ショップ内でコーディネートで販売されるようになっています。
当時、こうした平場、今でいうブラック。バイヤーが、気候、気温、お客様の反応に合わせて、毎晩のように展開を変更します。
冬なら、○○℃より下がったからウールコートの展開場所変更とか、春なら、○○℃越えたから、ドレスの展開を始めるとかで、残業だらけ。
計画で運営するのではありません、自然現象で運営しています。もちろん計画にある新作納品毎でも残業です。
こうした平場ではこだわりバイヤーがたまに出現します。売場の変更指示がいちいち細かく、センチ単位で指示します。
「このラック3センチ前ね」とか「あと5センチ後ろ」とか「1センチラック低くして」とかです。
急に残業で売場を変えるので、若手は残業準備と実務で常にヘトヘトでした。
ある時レンガのプロップがあって、いたずら心で、部下の一人が3センチくらいずらして反応を見ようとしたそうです。
そうしたら、その方、翌日、売場に着いた途端「誰だずらしたのは」といって、ずらしたレンガ3センチ程度を直したそうです。ある意味恐ろしいような社内伝説です。
逸話の方もあります。ある取引先の役員が言うのです。
「あなたたちの先輩には大変お世話になった」「かつて自分が駆け出しのころ、メンズのアパレルにいて、生地を売り込んでいた」「その時、あなた達の先輩の方に、混用率わかる?」と言われたんだ。
その先輩、生地から1本糸を抜いて、ライターで火をつけ灰皿に置いたそうです。その燃え方を説明しながら、混用率を言い当てたとか。
その取引先の方は、大変勉強になったと述懐していました。その先輩は随分昔の方だったらしく私は全く知らない方でした。
他にも、文化催事に長く携わった方もいます。著作物もあるような方。
その方のファッションの見方は独特で、「寛衣」と「搾衣」で分けると言っていました。
もちろん寛ぐころもですから、「寛衣」は体のラインの出ないファッションのこと、搾るころもですから、「搾衣」は体のライン、フォルムがでることで美しく見せようとするファッションだと言っていました。
この2つの項目で分類すると、結構上手に分けられます。私も30歳くらいの時に、この話を聞きましたが、その後よくこの分類でファッションを分けました。
特にミセスゾーンのファッションには、有効な分類でした。文化催事を長くやっていただけあって、この先輩の発想法は独特でした。
ちょっと変った多くの先人たちの影響も受けながら現在があります。
笑い話で終わるものから、次の時代まで語り継げるような話まで、この業界にはそんな話が沢山ころがっています。
先輩の昔話に付き合ってみると、結構面白いかもしれません。