【頼み方は間違えたくないですね】

同じ内容を頼まれ、全く反対の反応をしました

 チェックで有名な英国ブランドを国内大手のアパレル会社が作っていた時の話です。2000年代の前半の出来事でした。

 その英国有名ブランドはライセンスの確認のために日本の視察をします。ライセンスブランドの運営にはありがちですが、日本のアパレルでは、日本で売れるものを作りたいため、アプルーバルが通っていない商材が店頭に並ぶことことがあります。

 もちろん今回の大手アパレルも例外ではありませんでした。本国から視察が来る時にはそういう商材をバックヤードに隠します。言ってみれば視察逃れ。

 当時私はこのブランドで2つの取引がありました。通常のショップの担当とコート売場、つまりパワーアイテムの集積で成り立つアイテム売場の担当です。

 共にこのブランドの展開があり、取引先担当者はそれぞれいて、全く別の動きをしていました。

 視察対応の商談で、コートアイテムの担当は、最初からケンカ腰。どうしてこんな展開になるのかとか、どうして他のメーカーより見るからに扱いが悪いのかとか、こちらを責めるようなことを言い募ります。

 私は、売れるものが広がって、売れないものが縮小するという、平場の当然の論理で説明します。

 当時でも、価格と質のバランスの取れていないものはマーケットで通用しません。生地、縫製、フォルム、デザインなど平場のお客様が気にするポイントは外したくありません。

 当時のコートは、今は無き東京スタイルの商材の方が価格帯設定上大変有利な商売をしていたと記憶しております。

 そんな中、先方の担当者は言います。「このままなら、商品すべてを引かせてもらいます」と。いわゆる休止するぞという脅し文句です。

 私は、全く平場の商売を理解せず、商談の落としどころも探さず、自身の都合だけを言い募る交渉をする先方に頭にきていました。

 確か「そうしたいなら勝手にどうぞ」と回答したと思います。「取引を辞めたいなら、辞めれば?」という冷たい対応です。しかもこの時、先方からは本国の視察の話が一切ありません。ただ文句を言いに来ただけ・・・・。

 その数日後、ショップの担当者が来店します。この方、同じ会社なのか?と不思議に思うくらい人柄も柔らかく、冗談が通じて、自然体。取っつきやすい方でした。

 しかも、私が新入社員の時の担当で、支店に異動すると、そこでも担当、私が仕入れ担当になってからも、やはりこのブランドの担当となって異動してきていました。

 馴染みと言ったら馴染みです。だからこそなのか、もともとなのか、依頼の仕方が面白いです。単刀直入です。

 「こまっちゃってさぁ、本国から視察来るんだよねぇ、ちょっとだけ、ちょっとだけだから、今ある売れている品番さげて良い?お願い!!」なんて言うんです。

 その話で、視察があるとわかり、そのための展開是正だったのか、だからコート売り場の担当の来店があったのかと、その時初めて合点がいきます。

 ただ、目の前の馴染みの担当者の様子とか、正直さとか、伝え方とか、何をなぜ頼むのかと、是非助けて欲しいという言い方とで、特に突っぱねる理由をなくしてしまっていました。

 私の回答は「良いですよ、困らないようにしてください、ただ視察終了したら直ぐ現状復旧お願いします」で終了です。

 全く同じ依頼事項で来店している、同じ会社の同じブランドの担当者に、全くもって、真反対の対応をしたという話です。

 ブランド名の認知力、全国的な人気と、社内での実績規模と、大手という事が理由なのでしょうか、高圧的な態度には、こちらも厳しい態度で望みました。

 逆に、正直にお願いする態度には、暖かく了承しています。昔話の「北風と太陽」みたいです。

 柔らかい人の老練さには、底深い思惑もあるのかも知れません。かえって商談上手だと、その後、そう思うようになります。(その後、その馴染みの方、早い段階で、自ら役職定年をして、グループ企業に異動したと聞きました。販売現場でもう会えないと思うと、本当に寂しい思いをしたのを覚えています)

 人の心理を考える時、そうした経験を経て、自分の商談スタイルに磨きをかけようと思う出来事でした。

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