【私、若いんですか?】

年齢を言い訳にしませんでした

 2000年代半ばの頃です。百貨店の支店の仕入れ担当だった私が発した言葉が、フロアのスタッフさんに影響したことがあります。

 「店長あなたがこのフロアで一番若いんだよ!」という言葉です。少し説教じみた言い方だったかもしれません。喝を入れるようない言い方だったともいえます。30代半ばの百貨店バイヤーが、50代後半のショップ店長を叱ったのです。

 言われた方はキョトンとした思いますが、それでも、「あの、私若いんすか?」という返答、すごい剣幕の私への、精一杯の回答だったのではと思います。

 当時の支店はフロアのショップ店長がほぼほぼ還暦越えで、一番年上が80歳でした。その時代、百貨店全体にスタッフの年齢層を下げようという動きがあって、日本橋や上野から、年齢を理由に異動してきた方を私は積極的に受け入れていました。

 取引先は、年齢を理由の異動に対し、その年齢で受け入れてもらえるか心配そうに私に聞いてきます。私は全く年齢には頓着しなかったので、腕(販売技術)のある方で、お客様本位の方なら大歓迎です、と回答しておりました。

 そんな時、台東区の上野地区からやってきた店長がくだんの店長です。そのショップは、上野の改装のあおりを受けショップを休止し、私の所属する支店に新規導入として来たショップです。私は、新ブランドの販促を強化。品揃えを多くのお客様に知ってもらおうと躍起でした。

 そのためプロモーションを定期的に挿し込みました。その時の企画は、日本の技術でプリント部分の染めを行ったデニムで、人の手で図柄が書かれている物。その特別限定品を紹介しながら、通常ラインナップを紹介しようという企画です。

 商材の中身を電話商談で取引先営業担当と話そうと連絡すると、「プロモーションが続いていて、店長も疲れてきています、もう58歳ですしね、年齢が年齢ですから。少し休ませてもらえませんか?」と言うのです。

 企画を体よく断ろうとしているのがわかりました。私が、「年齢で疲れるっていうけど、それ店長本人が言っているの?」「現場から話をそのまま受けて、今回のプロモーションを断るよう、私を説得しようとしているの?」と発言。

 きつい言い方だったと思います。担当営業の回答は、その通りだが続けての企画は少し休みたい、くらいの回答だったと記憶しております。

 「じゃいい、私が店長に直接言うから、年齢を理由に断るなんて」といってすぐ電話を切り店頭に行きました。そこで、言ったのです、

 「あそこの店長は64歳、あそこは62歳、あそこは還暦、ここもそこもみんな還暦以上だよ!それでも新作が着荷して、パッキンが来れば、えっちらおっちらパッキン片づて、毎日毎日やってんでしょ!」

 「店長!あなたがこのフロアで一番若いんだよ!」

 「若いのに年だから疲れるって、どの口が言うんですか?お客様に品揃えを紹介したいんですよ、企画やって下さいよ!」と。

 周囲の下町ことばが影響してか、江戸弁のような言い方でまくしたてました。「あのぉ、私若いんですか?」がその時の返答です。

 もちろん私からは、「そうですよ一番若いですよ、このフロア一番の年長店長は80歳だし、みんな還暦以上ですよ」と。その店長、上野からの休止一連の流れで、百貨店がいう年齢の条件やロケーション、館の若返りなどの移設と異動をした記憶が、気おくれさせていたのでしょうか。

 その時の企画はしっかり実施しました。その後、ずーっとその会話が話題になります。

 私がその後本店に異動になり、業務で支店に来るとやはりその話題がでました。周辺の方含め印象に残ったのでしょう。ただ、当時の私はお客様本位で働く方で、腕のある方なら、全く年齢なんてどうでもよかったのです。

 今時代、もう年齢自体を言う世の中ではなくなりました。そういう意味では、端っこの百貨店の方が、進んでいたのかもしれません。

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