【婦人用品】

婦人用品も担当していました。

 2000年代の半ば、支店時代に婦人用品の仕入れ担当も兼務していました。婦人用品は男性にとっては全く未知の領域。どうしたものかと真剣にに悩んだものです。

 商品も販売現場もお客様のご要望もよくわかりません。本店から支店への辞令をもらった後、困ったなぁと思っていると、先輩の婦人用品の女性バイヤーから声をかけてもらい、赴任前に商品の勉強をする事にしました。

 限られた時間で、もらった資料を読み込んで、分かりづらい事だけ質問します。その事がその後、十数年経っても用品を理解する上で役立つ事になります。

用品の流れは大きくは2つ。

①その時代に美しいというフォルムになるように、姿を形作る傾向になるとき

②自然な姿を求め無理に形作らず、人の自然体を支えようとする傾向になるとき

 ①は締め付けもあり、装着時に苦しい時もあります。②は自然で良いのですが、人によっては、気になる部分へのケアが欠けると思う時があります。

 大きくこの2つの潮流の振り子になるようです。商材をみると、具体的な仕様からどちらを目指しているか分かります。

 店頭が、潮流のどちらか一方の商品だけになるような事はありませんが、理解する上で役立ちます。

 例えば、ブラジャー。谷間を作るためにリボンの部品をつけ、フォルムを形作る効果を手に入れながら、装飾性もあるとなると、ヒット商品になることもあります。それでいて、マイナス5才をイメージできるとしたら食指がのびるでしょう。形作る方の例です。

 この商品を作った取引先の凄いところは、数十年にわたっての女性の身体の変化の情報を持っていたり、追いかけた情報を更新していたりしている事です。何が身体にとって是で何が非か、科学からのアプローチがしっかりしています。

 その会社、その私の支店時代に新商品を発表します。形作るのではなく、着用すると身体の方がその形になるという商品でした。作り方が工夫されており、着用して歩くと自然と大股になり、その歩き方によって、筋力が付いたり、ダイエット効果をもたらすというもの。普段の着用で効果が獲得できる商品です。そこにしかない興味深い商材です。

 どんどん売ってやろうと思った私は、次々にプロモーションにのせます。地下鉄通路のショーウィンドーでの訴求、チラシ掲載、売場展開も前面展開、とにかくあるだけのプロモーションに載せました。

 当時の支店のお客様の中心年代が、50半ばから60代以上。少し年齢高め。そうした方や更に上の年代の方もご購入頂けました。仕掛けた新商品が売れるのは嬉しいものです。ただここで何件か、苦情が来るのです。

「履いていたら腰が痛くなった」

 すぐに取引先にその情報を伝えます。全国で10件弱の同様の声があったそうです。同時に、その内の半分弱が私の売場からのお客様のお声でした。

「頑張りすぎたのかもしれません、かえって申し訳ない」と連絡したのを覚えています。

 しかし、この取引先の凄いところは、この10件弱のお声に真正面から向き合った事です。やっと発売した新作。しかも、この商品はどんどん販売数をのばし、全国的に売れます。売れ行き好調なヒット商品です。

 その状況で、そうしたお声をしっかり聞いて、商品を改良する方針だというのです。より良いものを、より多くの方にお召し頂けるようにしたいとの事。少数でも意見を決して無視しないと。

 この取引先が用品業界でずっと巨人であるのはこうした取り組みによるのだなと、心底理解できた出来事でした。

 妥協しないもの作りへの姿勢や顧客満足に向けた取り組みの実例に居合わせたのです。私のこの取引先への信頼はこうした日々の取り組みを見るごとに増したのでした。

 未知のカテゴリーの婦人用品の担当になったことで、物を作るという事への姿勢の一つを、実体験として学ぶことができたのでした。

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