【マーケティング会社の功罪】

本当にそうなの? 

 商業施設では、マーケティング会社を使い、市場調査資料の作成依頼をすることがあります。世代論や、消費傾向、関心事など世の中の考え方や、行動傾向の変化を分かりやすく説明しくれます。

 こうした資料は、社内で講習会という場で発表され周知されます。決して悪いことではないのですが、こうしたマーケティング会社の報告の中身は概論的なものへの理解はしやすいです。

 業界専門誌、経済誌やドキュメンタリー番組などで見る傾向を分かりやすくまとめていたり、独自の視点があったりで得心しやすい内容なっていることがほとんどです。

 その一方で、個別の話になると別です。商業施設に来店するお客様を分析したとか、インタビューしたとか、情報ソースは明確なのですが、結論立てた内容には首を傾げる事がほとんどです。

 私の心の中の言葉で、

 「本当にこの館のお客様を見たの?接したの?」
 「どのくらいの期間お客様を観察したの?」

 という叫びにも似た心情が湧き起こります。最近ですが、こうしたマーケティングの講習会の中で、ファッションに対してのこんな提言がありました。

 「トレンド情報をもとにしたVMDの打ち出しは有効ではない!」

 というものです。理由の分析は、「お客様の消費傾向で、ネットショッピングやアプリでファッション消費をする」という結果があるから・・・です。

 馬鹿も休み休み言えの典型ではないですか?実店舗におけるVMDの役割を全く理解していない内容でした。

 題名には「ショッピングスタイルの変化」なんて題がついていますが、消費スタイルなんて変化するのが当たり前、なので現場を見てその変化の先を読むのが小売の仕事と思います。

 先を読み違えれば苦境に立つし、しっかりお客様の消費心理を捉えて、実践すれば実績は上がります。

 VMDは提案性やショップ内の整理整頓、仕入れを基にした戦略の要素で成り立っています。販売現場にとっては、戦略と戦術(VP、IP、PP)そして戦闘(接客)、戦果(売上)を左右する大事な事柄です。

 これを「有効ではない」と思う事自体が間違いです。VMDがしっかりできていないショップは外から見てグチャグチャに見えます。そんなグチャグチャショップでどこの誰が買物したいでしょうか?長く過ごしたいでしょうか?

 館のVP計画も一緒です。何も異なることはありません。

 市場調査の専門家の見識なので尊重はしますが、一般論と個別の案件とを混ぜこぜにした中身では、理論の筋は分かっても誰も説得できません。

 例です。館の空き区画で次の取引先の決まりが悪い区画に、関連付けもなく医療系のテナントを誘致するという案がありました。

 私はゾーンニングや買い周りの視点から、客数の母数が限られたり、構造上壁面だらけのフロアになったり、その区画以外を目的に来店したお客様のふらっと回遊する意欲を失ったりする可能性があると主張しました。

 医療系を沢山誘致するなら、どのフロアなのか、ゾーンはどうするかを考えた末の誘致でないと、真っ先に、来店客数の母数を減らし、買い回りを誘引しない結果になると何度も伝えました。

 その時の上司の回答は、「他の館見てご覧よ、医療系はいっぱい誘致されているじゃない、家賃の払もいいしさ、そもそも人間で病院行かない人っていないでしょ!」という具合でした。

 マクロとミクロをごっちゃにした意見です。こんな世の中(マーケット)の切り取りでは本当に良い館作りは難しいと感じたりしました。

 概論とエリアマーケティング、売場のメーケティングは自ずと異なるものです。業界の「あるある」なのかもしれません。

 小売に携わる限り、現場を何度もみて、分かるまで見て、マーケットの変化を感じ、お客様の購入心理の購買傾向の変化を知るべきと思います。

 昨今のマーケティング会社の報告結果を知り、かえって、小売の現場にいる私は、お客様の購買意欲が一層増す売場作りをしたい、すべきと思うのでした。

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