【ビジネスライク】
たとえショップでも、他人の物が欲しい
駅ビルを主たる主戦場にしているアパレルさんは結構ビジネスライクなところがあります。生き残りをかけて商売しているのだから当たり前かもしれません。
それでもフロア運営者として、熱心に取り組んでいるとショップには情も湧きますし、思い入れも強くなったりします。そのような中、言われます。
「隣(の商業施設)からこっちに来て欲しいと声がかかったので行っていいですか?」
こんな横槍で、大事な優良ショップを休止したくはありません(隣の商業施設にあげたくありません)。良い商売をしているから、隣の競業商業施設もこのブランドが欲しいわけです。
欲しい気持ちはわかります。しかしながら、会社規模が大きいからとか、主力都心店の出店バーターを理由にして、力尽くで、引っぱちゃえというのは、基本は無理筋のやり方です。
取引先に圧力をかけるのも、他人のものが欲しいだけ。別のショップ・ブランドでMD構築できない理由はありません。ただ、欲しいだけです。実際には、私はこんなことを日常的な心配事の一つとして仕事をしております。
誘致力は、大企業の理論で・企業の力でというのもありますが、誘致担当者のMDへの造詣と言うのもあって、信用を得て誘致の決定力になることもあります。
企業力で引っ張るか、商品そのものへの詳しさで引っ張るかと思って貰えば良いと思います。
有力商業施設絡みのこうした商談、取引先に「行っていいか?」なんて、ストレートに言われれば困りますし、引き止められる企業力がなければ、結果的に先方に従うしかありません。つまり自身にとってはブランドの休止です。
そんな事を実際言う人いるの?って思えても、私は何度も言われてます。数え上げれば、キリがありません。
百貨店だと、百貨店側が取引先との長い付き合いを理由に近隣から移設してこい、という要望を言う事はありますが、無理強いというより、言ってみただけという結果が多い気がします。
どんな取引でも禍根を残すような取引をすると、将来的な不調を招くかもと、嫌うからだと思います、言われた取引先も上手に断ることが多い気がします。
ただ、駅ビルブランドだと、結構ビジネスライクです。過去の経緯、ビジネスライクな発言で、どんなに禍根があっても、駅ビルブランド運営する取引先って新ブランドができれば相手に紹介するし、顧客ターゲット的に合致すれば、何度でも対象ブランドを売り込みにきます。
冷たくビジネスライクに言われたからって、こちらも過去の経緯で仏頂面ばかりはしていられません。いい商材は早くから食指を伸ばしたいもの。今の時代こうでないと生き残れないと思います。決して物販は順風ではありませんから。
ちなみに、その逆を取引先開発担当者に聞いたことがあります。
「隣の商業施設から私達商業施設に移ってきて欲しいと言ったら、来ますか?」と。
複数の取引先開発担当者からの回答は、
「こちらからショップが抜けていく事はあっても、向こうからこちらに来る事はありません」でした。
多店舗化していない、単店舗の力の限界、弱さを常に意識して仕事をするようになった事象でもあります。