【来店動機】
お店に足を運んで頂ける事のありがたさ
私が出向して、研究所にいた時です。1990年代後半。業務に百貨店の来店客調査がありました。文字通り、来店しているお客様の意識調査をするのです。本店が3千人、規模の小さい支店は千人を母数としていたと記憶しています。
支店の来店動機の中に、あまり上位では無いのですが、「子供服」という回答がありました。4位か5位くらい。もう少し下だったかもしれません。
支店の売上が当時150億程度。その売上で考えると、子供服の売上規模は小さく、何故上位なのかと不思議でした。
来店動機で最も多いのは食品。百貨店の食品売場は決して安価ではありませんが、東京23区の駅周辺だとスーパーもなく、百貨店が日常の食を支える一面もあるのでした。
ところで、子供服。少し気になり、支店所属のメンバーに理由として思い浮かぶことを聞きます。
現場を知るって大事ですね。現場の人間はすぐ回答をくれます。ターゲットが高齢で、60台前後からそれ以上。その方々が毎日のように食品売り場にきて、帰りに孫に何かプレゼントしたり、遠くに住んでいるなら送ったりで、子供服を利用しているのだと。だから、孫のための子供服売場なのだと。
そんな時、支店の収益改善で子供服売場の休止が話し合われていました。
業界的に子供服の供給は、専業業者が多く、サイズ商売(センチ単位での製品)。在庫を残しやすいために、発注し仕入れられても、売るのは百貨店スタッフ。
そのスタッフ分の人件費で考えると、子供服売場の収益と合わない。赤字であるというのです。
その代わり導入するのが、ユニクロでした。仕入れ契約でない契約をするとの考えで場所貸し。館の売上の計算に入れられ、人件費はかからず、収益だけ加算されると言う訳です。
経営に慣れれいる上層が考えた、経営の視点からの改装計画、子供服売場の休止でした。
初めに伝えた通り、小規模ながら来店動機の高い売場の終了を心配した私は研究所の上司にも心配を伝えた記憶がありますが、そうなると、現場はどうなるのかまで想像できる経験がありませんでした。
20代後半の頃で、小売りの業界で10年も経っていませんでした。
その後改装は実施され、徐々に影響がでます。
なんと食品売場の実績が降下し始めるのです。どうやら、毎日百貨店の食品売場に来店する、生活に余裕のある高齢者は、少し離れたところにある、商業施設に行っているというのです。
現場の声、お客様からのヒアリングの内容を教えてもらいました。そちらのは子供服があって、そちらの食カテゴリーの売場を利用するようになったと。
支店のメインの売上の降下は、当時の支店の経営者はびっくりしたことでしょう。恐らく営業経験豊かな方だったら思いつかない改装計画だったかもしれません。
買い回りとはそういうものだと、私は実例で知るようになります。商業施設は、お客様の来店動機を奪ってはならない。大事な事だと思います。