【運営をやれってことでしょ】

ブランド休止を言いにきた取引先社長の言葉

 このブログで以前「運営と管理」について書きました。その「運営」という言葉を取引先の社長から聞いた話です。

 ブランドの休止を言いに来た商談での話。先に来店したのは、その取引先の営業責任者でした。私の配下スタッフに対して休止を伝えにきたのです。

 休止なんて大問題、私を避けたのか、なぜ窓口の私に言いにこないのか!と不服の連絡をしたら、私の携帯に先方社長から直に着信があり、社長との商談となりました。

 「運営やれってことでしょ」の発言があったのはその時。そのショップは売上向上のポテンシャルあるブランドでした。私は、売上獲得の提案を何度もしてきましたが、その際の先方の回答は、全てNGです。

 どの店舗でも統一の展開・プロモーション・訴求・品揃えの制約があるなど店舗には全くといって言い程、自由裁量がありません。

 例えば、残暑で温度に影響の少ない雑貨の展開を前面にしてキャッチを増やそうと提案しても、本社指示は、NG。秋物の展開で厚手のニットが並び、VPでは気温は無視、売上推移が悪くても我慢しながら、次の季節の商材の展開を重点におくショップでした。

 「そんな状況を改善したらいかがでしょうか?お客様の特徴、店舗特性、エリアの特徴を見ず、できることをしてこなかったのは皆さんの方ですよね。それでは実績向上は見込めず、結果、休止を先行するなんて如何なものか?何度もこちらは提言してきたのに、断って実績不振にしたのはそういう皆さんでしょ!」と言い返しました。

 その時の取引先の社長の反応が「つまりはさぁ、運営をやれってことでしょ」の回答になるのです。

 後日ですが、社長から赤字店舗への宿題として、同時に休止撤回の宿題として、その翌月からの6ヶ月の予算を前年比113%の獲得という目標をもらいます。休止したいショップではないので受けるしかありません。

 ただ今時、二桁増の目標はあり得ません。休止と引き換えの条件ですから、挑戦するしかないのですが、同時に、私の言う「運営で乗り越えてみよ!」という社長の挑戦状と受け取りました。

 売られた喧嘩を受けて立つかの様な話に聞こえますが、とことんビジネスの話です。結果を申し上げますが、6ヶ月の挑戦の結果、目標超過し、結果を出しています。先方の休止の申し出はここで終了です、商談の約束事ですので。

 どうやって実績向上させたかと言っても、このブログで書いていることを愚直に実施しただけ。手を打てば、そもそもマーケットの特性をあまり顧慮しないショップですから、実績向上するのは自然です。

 環境上も追い風、近隣のショップの休止もありました。先方社長からは「休止ショップをあてにする様な楽観的な考えでは、前年割れるよ!」なんて発言もありました。しかし、エリアマーケティングからの視点なら、行き先を失うその店舗の顧客さんを拾うのはセオリーかと思います。つまり追い風です、ただの楽観ではありません。

 6か月後、結果が出てすぐ、社長に連絡を入れました。

 電話:
 私:「いきましたよね」
 社:「その様だね」
 私:「もう休止の話はおしまい、無しですよ」
 社:「うん、わかってるよ」の会話がありました。

 この社長、フットワークが兎に角軽い。気になれば現場を見にくる人で、スタッフに事情を確認できるとすぐ次の店舗に行ってしまう様な方。営業担当、責任者より現場を見にくる回数の多い方です。

 この社長は、以前この会社の親会社の営業幹部の方でした。私が仕入れ担当駆け出しの頃、この親会社と縁があり、その時が初対面。私には記憶に残る方でしたが、先方にとって私は、その他大勢の取引先百貨店の一スタッフだったに違いありません。携帯で「もうこの話無しですよ」なんて言える間柄ではありませんでした。

 更にこうした時、現場で最も大事なのは、事情を知らないショップ店長との関係です。施策があっても、状況によっては微調整が入ります。

 そうした時の実務は現場です。相互理解や協力体制、信頼がないと微調整といえど実施できません。コミュニケーションの大事さです。

 この期間に、こちらがお願いして販売現場から断られた事柄があります。コラボ商材へのキャッチフレーズ(販促表現として分かりすい物)のPOP掲出です。お客様には必ずアプローチするので、POPではなく、お声がけで対応しますという主張です。

 なんでもかんでも商業施設側の提案通り、唯々諾々ではなく、気概を持って対応しようとする姿勢を尊重しました。

 店舗休止の事情は隠されていますので、かなり気を使います。その上での目標越えです。その影響もあってかその後の趨勢も良い推移を継続しています。不思議な物です。一度軌道に乗ると、いい推移で安定します。

 客数確保の施策から、現場力(販売技術)の発揮、相互理解と協力体制の構築、当たり前かもしれませんが、大事なことです。基本に忠実に実施することの大事さです、こうした項目が欠けて退店に至るショップもあるのですから。

 具体的に何をしたか、新しさはありません。

 ①プロモーションに合わせた別区画での催事企画の実施(送客効果)
 ②館内のVP訴求の実施継続(送客効果)
 ③欠品の追加発注、特にサイズ欠品や本来なら入荷しない特別品の追加(適時適品)
 ④閉店店舗からの在庫の受け入れ(売り逃し防止の在庫増強)

 ただただ販売環境を改善するための愚直な動きだけです。でも、本当に大事だったのは、今まで出来なかった施策実施に理解して実施許可をしてくれた先方社長の存在です。心からの感謝の気持ちで一杯です。

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